平成28-令和2年度科学研究費補助金(基盤研究(B))

「公共用語の地域差・時代差に関する社会言語学的総合研究」

課題番号:16H03240

 

研究代表者:

井上 史雄(東京外国語大学 名誉教授)

 


1.研究概要

 本研究では、「公共用語の地域差に関する社会言語学的総合研究」という新テーマに関して、データを集め、分析した。従来見落とされていた斬新なテーマとして、公共場面での意識的使用、談話としての方言差および気づかない方言や方言景観を取り上げた。地方議会会議録のデータベースを活用し、新しい研究技法を採用した。さらにインターネット上から情報を得て、世界の諸言語・方言の国際的相互普及も探求した。

日本語方言学の主な関心は、古来の日常の方言使用だった。21世紀に入り、高年層も方言を保持することが少なくなり、従来型の方言調査では、地域差をカバーできない。本研究では、新鮮なテーマとして、気づかない方言や、談話としての方言差、および公共場面での方言使用を取り上げた。また新しい研究技法を採用し、公共的場面として地方議会会議録のデータベースを活用し、さらにインターネット上から情報を得た。

研究は、当初計画通り進んでいる。2018年度はデータ収集と分析を進めた。研究代表者が通勤する義務がなくなり、一方有能な作業者が見つかったので、データ入力や分析、考察が進んだ。またフィールドワークにより、離島の方言を新たに収録した。さらに、離島で津波災害について、持続可能な伝承を確立することに、研究者として働きかけた。新聞や雑誌によって、成果を一般人にも公開できた。データ分析、考察をさらに進めた。学術誌・国際会議でも公開した。

本研究で採用した視点と研究技法は、社会言語学・経済言語学の下位分野として位置付けられる。景観言語学・都市言語学の中に位置付けられ、同時に視覚言語学visual linguisticsという新分野の萌芽を示す。研究成果は紙出版によらず、また電子出版にもよらず、ヴァーチャル博物館として、インターネットで公開することも視野に入れている。

 

2.研究メンバー

Daniel Long  首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (00247884)

阿部 新  東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 准教授 (00526270)

山下 暁美  特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (10245029)

半沢 康  福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)

松田 謙次郎  神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40263636)

木村 泰知  小樽商科大学, 商学部, 教授 (50400073)

柳村 裕  東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (50748275)

田辺 和子  日本女子大学, 文学部, 教授 (60188357)

田中 宣広  岩手県立大学宮古短期大学部, その他部局等, 教授 (60289725)

西尾 純二  大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60314340)

高丸 圭一  宇都宮共和大学, シティライフ学部, 教授 (60383121)

竹田 晃子  立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (60423993)

宇佐美 まゆみ  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (90255894)

岸江 信介  奈良大学, 文学部, 教授 (90271460)

久能 三枝子 (高田 三枝子)  愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90468398)

鑓水 兼貴  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報発信センター, プロジェクト非常勤研究員 (20415615)

 

3.研究成果

 本事業における研究成果の一部を以下に公開する。

※利用は研究目的に限ります。

・「全国高校録音資料」のword-segmented file (TextGrid)の公開

  • 「全国高校録音資料」は、1986~88年度科学研究費補助金「日本語音声の地域差・世代差の音韻論的・音響学的分析」(代表井上史雄教授(当時,東京外国語大学)の成果による音声資料です。ここで公開するのはTextGridファイルだけです。音声資料の利用をご希望の場合は、別途、井上史雄氏の許可が必要となります。
  • TextGridはフリーの音響分析ソフトPraat用のラベリングファイルです。
  • ここで公開するword-segmented fileには以下の情報が含まれます:

(1)語(または文)の音素表記

(2)収録当時想定した分析対象拍の子音、母音

(3)収録対象音位置(語頭(WI)/語中(WM)/語末(WF))

(4)segmentation作業者による注記情報(主に言い間違い)

※第1・2層=(1)、第2層=(2)(3)、第3層=特になし、第4層=(4)

※ただし、(2)(3)については、作業時点で作業統括者である高田が資料に基づき推測したものであり、必ずしも調査者の意図とは一致しない可能性があることをご承知ください。

 

 <全体統括>:高田 三枝子(久能 三枝子)

 <事務担当>:溝井 晴美柳村 裕

 <TextGrid作成作業>:青木 夏希今竹 良希加藤 幹治佐藤友香高橋 舜谷川 みずき渡邊友陽

ほか数名(50音順)

*半年以上従事された作業者の方を対象として掲載しています。(ご自分のお名前が挙がっていない方はお知らせください。)